★作者編
1 大学在学中の公募がきっかけで文章の世界に入られた、ということですが、本職にしようと思い始めたきっかけはありましたか?
ありません。本職もなにも……ものごころついて以来、そう思っていたので。
むしろ、ほかのいろいろな職業を考えてみるのが空想でした。
たとえば、もし畳屋さんだったら、とか、もし国土地理院勤務だったら、とか空想してみて、それで終わるというか、ほかの職業については現実的ではなかった。
2 作家になる以前に、同人誌に書いたことはありますか?
一回だけあります。
大学のとき、文学部の数人が一回だけ出した同人誌に書きました。
制作にはタッチしていませんでした。「なにか書いて」と言われて、めんどうだった(団体でそういう作業にかかわることが)ので、ノートに勝手に自分で書いてもっていたものをそのまま渡しました。さしてできのよくないエッセイを。
しばらくして、できあがった同人誌をみて腰が抜けそうになった。あまりのレベルの低さに……。もう時効だろうから言いますが……。『burai』とは比べものにならないシロモノでした……。他大学に通う友人に見せたら、その人も腰を抜かしたのでこれは客観的判定だと思います。でも制作にたずさわった友人たちには非常に好感を抱いていました。性格のいい人ばかりでしたから。
3 大学時代サークルやアルバイトはやっていましたか?
体育会卓球部。
ただし、私は昼間部なのに、夜間のほうの卓球部だったため集合時間が夜の8時だとか7時だとか連絡され、待ってられず、ほとんど練習に出ず、試合にだけ出て負けてました。明治学院や成渓の人に。
4 小説や文を書く以外に在学中に就職活動を行いましたか?もし文筆業に携わっていなかったらどんな職業に就いていたと思いますか。
しませんでした。
理由は1の応えのとおり。
5 憧れの作家は誰ですか
高校を卒業するまでに読んだ作家ほぼ全員。男女ともに。
写真も集めていたのは野坂昭如さん、柴田錬三郎さん。
野坂さんは作品もよく読みましたが、柴田さんの作品は一冊しか読んでなくて、ただ外見が(外見から勝手に思い描く雰囲気が)好きで、油絵に描いたりするうち、こういう思いをどう処理していいのかわからず、『週間プレイボーイ』の今東光の悩み相談のページに出して採用されたことがある。それが自分の文章が活字になった最初のものです。
6 姫野さんと同年代の作家で、ライバルを一人挙げるとするしたら?
山口百恵。
うそ。
中三トリオのよしみ(笑)で『蒼い時』は読みました。よくおぼえていませんが……。
自分の年齢よりプラスマイナス10歳としても同世代の人を(人も作品も)ほとんど知らないんです……。満遍なくいろんな人を読むというタイプではないので。
作家や編集者の集まるような場所や催しにも、まず行きませんね。
めずらしく行ったとき、そこでxxxxと言う人の名前が出たので、
「え、その人だれ?」と言って大顰蹙を買ったくらいです。
「現代日本文学の旗手であり、あなたくらいの年の作家なら全員が影響を受けたはず」と、あとでトイレで編集者から説明を受けましたがほんとに知らなかったの。ほんとに名前すら知らなかったの。
7 単行本デビュー作『人呼んでミツコ』再出版おめでとうございます。帯に「時代がミツコに追いついた」とありますが、この早すぎたデビュー作をご自身で読み返してみて、どうですか。
アラばかり気になる。
風俗、流行の変化に驚く
8 つい最近まで両親や親戚に小説家である事実を隠していた、と仰っています。もしデビュー当時に知られていたら、今の姫野カオルコはどうなっていたと思いますか。
一家離散。
9 また、知られてしまった後変化はありましたか?
親族からの冷淡な視線。
詳細をここで言うのもいやな気分になるので控えます。
10 「無冠の女王」の異名をとるほど、賞とは関係なくこれほど支持されている作家は稀だと思います。姫野カオルコに相応しい賞を作るとしたら、どういう賞にしますか?
そんな異名あるのですか?賞がないなあ……(身も凍るダジャレ……)。我ながら賞もない……(……。)
私のことより、山田風太郎さんがなにも賞をとってないことが解せません。(晩年、もう病床につかれてからの一つは別として)
彼に賞を与えなかったのは、現代日本文学の汚点とさえ思っています。
といっても御本人は賞のことなどどうでもよく生きておられたようですが。
訃報に際して、ある人が氏のことを「通俗にして低俗にあらず」と評しているのを読み、怒りを覚えました。
評者はもちろん絶賛してこのように言っているのはよくわかるのですが、このような修辞は、彼の高みを歪めて伝えるものだ。せめて「低俗にして通俗にあらず」と言ってほしかった。うんこが出ても、痰で追っ手をまく忍者が出ても通俗にならない。あの高みはいったいどこから来るのか、そのあたりを切ってこそ知性というものに対する普遍的な評論になるのではないか。
すみません、話が逸れました。