bookレビュー
<大絶賛>
たとえば。 お風呂で丁寧にからだを洗っているとき。 1500m泳いだ後のクールダウンの一本。 電車の中で文庫本を閉じた瞬間。 夜中に聞くCD。 ひとり。 心がふとさまよい出た空間を掬い取った美しい物語が、5篇。 姫野カオルコがのびやかに物語る詞が、気持ちをほぐしてゆく。
(うわー はやしなつせ H11.12.10)
人は皆等しく孤独だ。友人がいようと、暖かい家族と一緒であろうと、たとえ配偶者に恵まれていようと。そして、ひとりでいるときも。 「目が醒める。ひとりである。のろのろと毛布から手をのばし、多機能電話機の#ボタンをおす。ゴゼン、ジュウジニフンデス。合成された彼女の声は告げる。ひとりである。頭が痛い。・・・」
『愛はひとり』
街でひとり暮らすオトナの女性、ひとりであること、ふと浮かぶ幻想、姫野カオルコは詩的なモノローグですくい取り固定する。美しい5つの短編だ。叙情に流れず、ドライなユーモアを交えた独特の語り口が、逆に切なさをリアルに描く。 時には、しみじみと感傷に浸ってみるのがいい。「わたしは、さみしくなんか、ない」とがんばっていると、心の底に澱が溜まってしまう。フランソワーズ・アルディのレコードを探し出して、上等なお酒を奢って文庫を一冊。「寂しい」なんて、とても口に出せない青い季節にはできなかったことなんである。
******************** #姫野さんの【文章講座】の教えに反して、カッコつけてしまった....
( はやしなつせ H12.02.10) |
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