E-listBBSSearchRankingMilkyway-KaiganGo to Top
 
 
 

bookレビュー


 


 

『愛はひとり』

姫野カオルコ  集英社文庫('95/09 幻冬社)  
<大絶賛>  
 たとえば。
 お風呂で丁寧にからだを洗っているとき。
 1500m泳いだ後のクールダウンの一本。
 電車の中で文庫本を閉じた瞬間。
 夜中に聞くCD。
 ひとり。
 心がふとさまよい出た空間を掬い取った美しい物語が、5篇。

 姫野カオルコがのびやかに物語る詞が、気持ちをほぐしてゆく。
 緊張をゆるめ、詞の流れに身をまかせて、心の放浪や寄り道を共にする。物語のなかから自分の世界に再び戻ったとき、軽いため息と共に自分の心が甦るのにあなたは気づく。
 
 

(うわー  はやしなつせ H11.12.10)
 
<私的感想>
 人は皆等しく孤独だ。友人がいようと、暖かい家族と一緒であろうと、たとえ配偶者に恵まれていようと。そして、ひとりでいるときも。

「目が醒める。ひとりである。のろのろと毛布から手をのばし、多機能電話機の#ボタンをおす。ゴゼン、ジュウジニフンデス。合成された彼女の声は告げる。ひとりである。頭が痛い。・・・」
 姫野カオルコは”女がひとりであること”の森閑、しんとしたせつなさを描くことに長けている。

『愛はひとり』
○夢みるシャンソン人形、○つけぼくろ、○しかし、まだ旅は続く、○水の中の環、○ジュテーム・モワ・ノン・プリュ。
 70年代を知る人なら懐かしく思い出すだろう。往年のフレンチポップスにちなんだ題名は、甘く優しく切ないメロディ、心地よく「さびしい」気持ちになるフランス語の歌詞を連想させる。

 街でひとり暮らすオトナの女性、ひとりであること、ふと浮かぶ幻想、姫野カオルコは詩的なモノローグですくい取り固定する。美しい5つの短編だ。叙情に流れず、ドライなユーモアを交えた独特の語り口が、逆に切なさをリアルに描く。

 時には、しみじみと感傷に浸ってみるのがいい。「わたしは、さみしくなんか、ない」とがんばっていると、心の底に澱が溜まってしまう。フランソワーズ・アルディのレコードを探し出して、上等なお酒を奢って文庫を一冊。「寂しい」なんて、とても口に出せない青い季節にはできなかったことなんである。
 そうして、少し元気になってあなたの現実へ戻るのだ。
 おセンチしたい夜もある。

********************

 #姫野さんの【文章講座】の教えに反して、カッコつけてしまった....
  
   スカしてないのに美しい短編。無機質なのに叙情 <「うなぎ」に似ているか?

( はやしなつせ H12.02.10)


 
 
 
 
 
 

| 姫野ファンサイトTOPへ | 姫野作品の感想


  inserted by FC2 system